八戸東和薬品で「カイゼン」できた3つのこと
八戸東和薬品㈱では2012年からセル生産方式を用いた「カイゼン」を進めています。
セル生産方式とは「人を活かす究極の生産システム」と言われ、生産管理面では「製品の初めから終わりまでを1人から数人の少人数で作り上げる生産方式」と定義されています。
(出典:セル生産の真髄 著:金辰吉)
「カイゼン」を進めてきたことにより3つの問題が解決しました。
製造現場で有名なこの手法。トヨタ式生産方式などの流れを組むセル生産方式をなぜジェネリック医薬品販社である僕たちはなぜ始めたのかを書いていきます。
「カイゼン」を始めた理由
目的は簡単です。少ない人数でより多くの仕事をしたいと考えたからです。この話は私たちにはとても大事な話でした。2012年当時、私たちは恵まれた市場環境の中にいて、2008年頃から、本格的に医療費抑制を目的としたジェネリック医薬品の推進策があり、業界全体で右肩上がりの成長をしていました。その波に乗り忙しい毎日を過ごしていましたが、その忙しさと共に様々な問題も起こり始めてきたのです。
課題1「在庫が増え倉庫が手狭になった」
出庫量が年々増えてきて、倉庫がだんだん狭くなってきました。同時に入庫量も増えて繁忙期は棚から商品が溢れかえり歩くスペースもないほどでした。
課題2「仕事量が増え残業やミスが増えた」
それまでの仕事のやり方ではキャパオーバーしてしまいました。残業が増え社内の雰囲気も常に疲れているような元気の無さでした。同時にミスも増えお得意先にご迷惑をかける状況も増えているように感じられました。なんといっても商売の基本は「信用」です。忙しいからミスが増えていますという言い訳は通用しません。忙しさに対応するための業務の再構築が急務でした。
課題3「薬価制度変更の影響があり出庫量の増加に対し今までより売上・利益が上がらない」
市場原理として競争が増えると当然価格も下落傾向になります。ジェネリック医薬品の推進はあくまでも医療費抑制のためであってジェネリック医薬品業界を保護するものではありません。企業は利益を上げ、キャッシュを増やしていくことを目的としています。無駄を減らし利益を増やす、つまり収益性を高めるための対策が早急に必要でした。
なぜ「カイゼン」を選んだのか?~会社をよくする方法は大きく分けて2つ~
会社をよくする方法はたくさんあります。例えばコンサルタントの種類も
・マーケティング
・ブランディング
・組織マネジメント
・営業
など多数ありますが、そんな中でやるべき戦略は大きく分けて2つになります。それはポジショニング戦略かケイパビリティ戦略です。
ポジショニング戦略とは、外部環境をベースにいかに自社製品で独自のポジションを作り競争しない場所で勝負するかがカギです。
ケイパビリティ戦略では、内部環境をベースに自分たちの強みを活かして、組織としてどのように勝負するのがカギです。ここでは、効率性やスピードなど社内のオペレーションが大事です。
もちろん2つとも非常に大事です。ただ、ジェネリック医薬品販社である私たちは製品開発をしていません。また、八戸東和薬品㈱の場合、東和薬品㈱の商品のみを取り扱っているということと、ジェネリック医薬品はすでに競争が激化している商材なので独自のポジションを作り競争せずにビジネスをするというポジショニング戦略は私たちには難しいし時間がかかると判断しました。
一方、ケイパビリティ戦略は私たちの課題を解決するものだと感じました。私たちが欲しかったのは業務効率化とスピードです。なぜなら、私たちが競合している相手はとても大きい会社が多いです。いずれも何千億~何兆円規模の会社です。規模では歯が立ちませんが何か戦略が必要です。そう考えると私たちの強みは小ささを活かした素早さになってきます。
「カイゼン」をした結果どうなったか?
結果1.「在庫が減り倉庫を有効活用できるようになった」
発注から納品までのリードタイムを考慮し、在庫量を売上の0.8ヵ月分から0.5ヵ月分にしました。在庫スペースが40%減り、8平米分の空きスペースもできました。結果、増築する必要が無くなり、増築費用に1000万円弱のかかりそうでしたが、そのキャッシュは使わずに済みました。4年続けていますが在庫金額は増えていません。在庫を減らした分がキャッシュに変わり自己資本比率が上り経営状態が良くなりました。
結果2.「仕事量が減りミスが減った」
そもそも効率の良い、生産性の高い仕事が何なのかを学び実践しました。エリヤフ・ゴールドラット著の“THE GOAL”では「生産性とは目標に向かって会社を近づけるもの。目標が分かっていなければ全く意味がない。」と記されています。私たちは目標を「社内スタッフが残業しないで帰る」ということに設定しました。作業の流れを見直し、1ヵ月足らずで1人当たりの作業時間2時間削減できました。当時、10人で作業をしていたので合計20時間の削減になります。一日一人8時間労働として、2.5人雇用せずに済んだ計算になります。流れを見直すことにより業務量が減り、時間もできミスも減りました。出庫量が4年前に比べ月8000個増えましたが、繁忙期以外は残業せずに帰れています。
結果3.「薬価制度変更の影響の中で固定費が抑制されるようになった」
カイゼン活動をする中で社内の効率化が進み固定費の抑制ができていますが、それだけでは売上は上がりません。どう売り上げを上げていくかの戦略も必要です。今まで出庫作業が忙しく朝から営業チームも一緒に作業していました。社内スタッフの努力により、その作業をせず、面談先へのロープレの時間に充てることができるようにしています。カイゼンの意識が浸透し、どうすれば効率よく訪問できるかも精査し、営業マン一人当たりの訪問件数が2年前は1ヵ月で190件平均でしたが、今では230件~260件の訪問ができるような体制になりました。
未来に備える
上記の3つの問題は、ジェネリック医薬品販社の現在の市場環境であれば、起きているかもしくはこれから起きる状況です。抜本的な薬価制度改革の議論がされておりでジェネリック医薬品の価格帯の集約や毎年の薬価改定を見越して準備していくことは避けて通れません。
今後の計画
今後は営業の見直しをしていきます。現時点ではお客様からいただいたお話をクラウドに入力し内容の種別に整理し、毎朝対策を練り提案できるような体制を構築している最中です。今までは各営業がノートやエクセル管理していましたが、どの情報がどこにあるのか探す時間をムダだと考え、検索ワードで情報を検索できるようにし、例えば営業の会議をするためのグラフづくりや日々の行動管理など営業活動に使うすべての情報をクラウドに入力することでデータを蓄積し、さらに快適な提案ができるようになればいいなと考えています。